コーヒー豆を近くの焙煎店や問屋に買いにいく際、
ナチュラル と ウォッシュト という言葉を頻繁に目にすることでしょう。
しかしなんとなく目にしたことがあるだけで、
実際の違いをあまり知らない人も中にはいるかと思いますので、
本日はコーヒー豆の精製方法に焦点を合わせて書いていこうと思います。
Contents
「 ナチュラル 」と「 ウォッシュト 」って何?
冒頭でも軽く述べた通り「ナチュラル」と「ウォッシュト」とはコーヒーの精製方法を表します。
コーヒーでいう精製とはコーヒーチェリーから中身の種子を取り出して乾燥させる作業のことで、
この精製作業を行うことによって、コーヒー豆を出荷するまでの保存性を高めることができます。
そして重要なのが、精製方法によってコーヒーの味や香りに違いが生まれるのですが、
これはどの段階で乾燥させるかが大きく関係しています。
「ナチュラル」と「ウォッシュト」の違いを端的にいえば、
どの段階で乾燥させるか、の違いになっているというわけです。
“ナチュラル”の特徴
私たちが「ナチュラル」と呼ぶ精製方法は、
まず収穫したコーヒーチェリーを1週間ほど天日干しします。
これはネットの上やコンクリートの上で行われることが多いですが、
上のほうと下のほうとでは乾燥のスピードに差が生まれるため、
ネットの場合→一日2~3回混ぜ合わせる
コンクリートの場合→一日5~6回混ぜ合わせる
乾燥作業は果実の水分含有量が20%以下になるまで繰り返します。
こうすることにより乾燥で黒くなる部分が出るのでそれを脱殻し、生豆を取り出します。
取り出した生豆の乾燥させ水分含有量を12%前後
天日干しができるだけの広い土地、炎天下の中毎日何度もコーヒーチェリーをひっくり返す作業を必要とし、天日干しの最中に雨が降ると果肉が発酵したりカビの原因になりコーヒーの香りが劣るデメリットがあります。異物混入が少々目立ち、シルバースキンも残りやすい傾向も。
しかし、この方法で精製したコーヒー豆は“比較的甘みがあり、しっかりとしたボディ”を感じます。
この精製方法は、ブラジルやエチオピアなど伝統的なコーヒー生産国で主に採用されています。
参考になればと、コーヒー生産国の収穫期をまとめた記事も準備しましたので、
気になる方はぜひ観てみてください。
例えば、“ブラジル トミオフクダ ドライオンツリー”や“エチオピア シダモ グジG1”などがこれにあたります。
全く同じ精製方法を中米では「ワイニープロセス」と呼んでおり、中米ではブラジルより湿度の高い気候の中で乾燥させているので水分量の多い完熟状態で収穫してゆっくりと乾燥させていきます。
このため、ブラジルのナチュラルと比べてコーヒー豆の風味・香りに違いが生じます。
同じ精製方法を行っていても環境の違いで異なった風味が出る、
当たり前のことですが改めて考えるとコーヒー豆の興味深い点の一つだな、と思いました。
“ウォッシュト”の特徴
こちらはまず収穫したコーヒーチェリーを大きな水槽に入れ、水に浮いている未熟果実や完全果実、また水に沈んでいる小石などの異物を除去します。
次に、コーヒーチェリーの果肉をパルパーという機械で取り除いたら、発酵用の水槽に移し替えて、10〜40時間ほど浸けて発酵させます。すると微生物の働きでミシュレージが分解され、ぬめりが取れてきたところで水洗いします。
後は天日干しか機械で乾燥させ、パーチメントを脱殻して生豆を取り出します。
最後に選別機で混入している不純物を取り除いたら完了です。
この方法は異物除去の手間がかかっているため“精製度が非常に高い”一面、水槽などの設備を必要とし、大量に廃水が出るデメリットも持ち合わせます。
しかし、精製したコーヒー豆は“酸味が豊富ですっきりとした味わい”になる傾向にあります。
この精製方法はメキシコ、コロンビア、ホンジュラス、グアテマラ、ハワイなどで採用されています。
例えば“グアテマラ アロテペケ農園 パカマラ”や“ホンジュラス サンタロサ農園”などがこれにあたります。
その他にもある精製方法
「ナチュラル」と「ウォッシュト」が主な精製方法ですが、他にも一部で取り入れられている精製方法が存在します。
1つ目は“セミウォッシュト”です。この方法は、ウォッシュトの発酵過程を省略し、パルパーでミシュレージまで取り除いてしまう方法です。
ウォッシュトのように“廃水が出ない”ため環境に優しいということで「エコウォッシュト」とも呼ばれています。
ちなみにこの方法で作られたコーヒー豆はウォッシュトと同じく“酸味が豊富”な味の傾向になります。
2つ目は“パルプトナチュラル”です。先ほどのセミウォッシュトとほぼ同じなのですが、果肉をパルパーで取り除く際にミシュレージを少し残す点が異なります。
実はコスタリカではこの方法を「ハニープロセス」と呼んでいます。なぜかと言うと、コスタリカではミシュレージのことを“ミエル(はちみつ)”と呼ぶからです。
また、そのミシュレージの残し具合によっても呼び方を変えており、完熟の実のぬめりを残すのは「ブラックハニー」、完熟の前の実のぬめりを100%残すのは「レッドハニー」、半分だけを残すのが「イエローハニー」、ほんの少しだけ残すのが「ホワイトハニー」と呼ばれています。
この方法で作られたコーヒーも「ハニーコーヒー」と呼ぶのだそうです。
ちなみにこの方法で作られたコーヒー豆は、“しっかりとした甘み”と“クリーンな味わい”が特徴です。
そして最後に“スマトラ式”です。
インドネシアのマンデリンが採用しているこの方法は、
収穫したコーヒーチェリーの果肉をすぐパルパーでミシュレージを残すように取り除きます。
発酵槽にて発酵させたらパティオ(乾燥用の広い土地)にて2〜3日乾燥させます。
完全に乾ききらないうちに脱殻し、水分を多く含んだ生豆を取り出します。
そしてその生豆を再び乾燥(水分含有量17〜20%)させて完了です。
この方法により“マンデリン特有の苦味と香り”、“穏やかな酸味”、“濃厚なコク”が生み出されています。
<精製で取り除いた果肉部分を再利用?>
上記のすべての精製方法にてコーヒーチェリーの果肉や皮の部分(カスカラと呼ぶ)が除去されていることがわかります。
一部では発酵させて肥料として利用しているところもありますが、ほとんどのところが廃棄しています。
これでは環境によくないことから、どうにか使い道はないか、と考えていく内にこのカスカラを飲み物として利用する方法を発見しました。
もともとコーヒーチェリーの果肉はとても甘く、フルーティーな風味を持っているため、これを丁寧に乾燥し、風味をギュッと閉じ込めた“カスカラコーヒーチェリーティー”は一部の間でとても人気が出ているほどです。
コーヒーに比べてカフェインが少なく、また抗酸化作用が高いとされるポリフェノールを豊富に含んでいることからアンチエイジング効果や糖尿病の予防にも効果が見られます。
この記事を読んて焙煎や生豆にも興味が沸いた方は珈琲問屋なんかにもぜひ遊びに行ってみてください!